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第 2 章 技術解説
2.4 セルの動作原理
FRAM は , 強誘電体材料を使用し , 強誘電体のもつ分極現象を利用したメモリです。FRAM セルの
動作原理を理解するには , 強誘電体の特性 , すなわち分極電荷量 Q の電圧依存が示すヒステリシス特
性と強誘電体キャパシタの分極状態とを対応させて見ていくことが基本となります。
強誘電体キャパシタに印加する電圧をVf, 上部電極に対して下部電極の電位が高くなる方向をプラ
ス(+)にとれば , ヒステリシス曲線と強誘電体キャパシタに蓄積される電荷との関係を図「ヒステ
リシス曲線と強誘電体キャパシタの分極状態」に示します。
図 2.5 において , ヒステリシス曲線上の 6 点 , すなわち Vf = 0 V で残留分極量 +/−Pr をもつ分極状態
の異なる A, D 点 , Vf = +/−vc で分極量が 0 になる B, E 点 , および Vf = +/−Vcc の C, F 点について , 各
点での強誘電体キャパシタの状態を示しています。
ここで , 電圧を 0 V → +Vcc, 0 V → −Vcc へ印加していくと , 分極状態は , A 点→ B 点→ C 点 , D 点
→ E 点→ F 点へと , それぞれの点を結ぶ曲線を描きながら分極状態が変化していきます。一方 , 電圧
を +Vcc → 0 V, −Vcc → 0 V へ印加した場合のそれぞれの分極状態は , C 点→ D 点 , F 点→ A 点へと変
化しますが , 分極方向は反転せず分極量のみわずかに減少します。C, F 点での分極量をそれぞれ Qs,
−Qs とし , この点を飽和分極量といいます。
これらの強誘電体特性をメモリに適応させるには , 二つの分極状態を "0", "1"に対応させて , 上向き
の分極量を "0", 下向きの分極量を "1" とします。また , 強誘電体キャパシタに印加する電圧を 0 V(電
源をオフ状態)にすると分極状態は , 図 2.5 のようなヒステリシス曲線での D, A 点 , すなわち , 残留
分極量 +Pr,
−Pr となりデータの保持が可能となります。
図 2.5 ヒステリシス曲線と強誘電体キャパシタの分極状態
Qs
C
B
A
F
E
D
ON
ON
OFF
OFF
-Pr
−Vc
−Qs
−Vcc
1
0
+Vc
+Vcc
+Pr
Vf [V]
Q [µC/cm
2
]
A("1")
+Pr
E
C
F
−Pr
B
D("0")
Qs
+Vc
-
Vcc
−Qs
+Vcc
−−−
−−−
−−−
−−−
−−−−−−−−
++
++
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+++
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−−
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++++ ++++
++ ++
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+++++ +++++
++
−
−
−− −−++++ ++++
+++++ +++++
++
−−
−−−−−−−−−−
+++
+++
++++++ −−−
−−−
−−−
−−−
電圧を 0→ +Vc → +Vcc →0 → −Vc → −Vcc → 0と変化させていった場合の強誘電体の分極量の変遷を表しています。